ネット階級社会:GAFAが牛耳る新世界のルール (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
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内容説明
Google、Apple、Facebook、Amazonなどにより、生活は便利で快適になった。一方、既存産業の破壊、個人情報流出、格差拡大といった問題が多発している。ユーザーはサービスの代価として問題を受け入れるしかないのか。一握りの企業が主導する流れは不可避なのか。これからのインターネットと社会のあり方を探る、メディアとIT業界で議論を呼んだ警告の書。 目次
序章 建物はメッセージである
第1章 ネットワーク
第2章 マネー
第3章 破綻したセンター
第4章 個人革命
第5章 豊かさによる破滅
第6章 一パーセント経済
第7章 クリスタル人間
第8章 大失敗
結論 解決策
インターネットへの主な批判
グーグルやアマゾンのような市場を独占するほど強大な企業をつくる
透明性や開放性ではなく、何もかもを調べつくす情報収集サービスや監視サービスを生み出している 差別を促している
多様性を根付かせるのではなく、一握りの白人青年たちに巨万の富をもたらしている 自分も割とインターネット礼賛側の考えだったが、功罪について考えるキッカケになったkidooom.icon
インターネットのおかげで間違いなく世の中は便利になってはいるものの、負の拡大や富の集中をもたらしており、人類の滅亡を早めている気がしないでもない
インターネット自体が悪いということではなく、インターネットを利用して利益を得すぎている人もいれば、吸い取られている人・悪影響を受けすぎている人の格差が大きい
自分のようなソフトウェアエンジニアは、恩恵を大きく受けている側の人間。だからインターネット礼賛側の態度になっている。 「われわれが建物の形を決める。しかるのちに建物がわれわれを形づくる」
インターネットが作られ、しかるのちの現在、インターネットによってわれわれが形づくられてきている
「真実がズボンをはこうとしているあいだに、嘘は世界を半周している」
インターネットのメリットは目に見やすく、日々体感できている
逆に、インターネットのデメリットは目に見えにくく、静かに蝕んでいく
インターネットの起源について
アメリカはソ連の核ミサイルを恐れるようになり、軍事システムの研究に多額の資金を投じた
核攻撃に耐えうるための分散型ネットワークが発明された
共通プロトコルができたことにより、あらゆるネットワークが通信できるようになった
悲しいことに、現代使われている電子メールの半分以上はスパムメールに占められている インターネットによる電子的な空間、サイバースペースの概念が浸透
WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)の構築
1991年に初のウェブが公開
2022年の現在から考えて、まだ30年前の出来事
少数の勝者が総取りして、広く中程度に分配されないから
独占企業を作りやすい
本書では、そんなピーター・ティールへの批判が何度も登場する
ティム・バーナーズ・リーのような学者から、シリコンバレーの実業家たちの手に渡った
雇用を破壊しているアマゾン
2014年の調査によると、売上高1000万ドルあたりの雇用従業員数が、実店舗のある小売業では47人に対し、アマゾンでは14人
アマゾンは労働組合がなく、従業員への監視が強くて労災もよく問題になっている
従来よりも働く従業員の数が少なくて済んでしまうインターネット企業たち
2014年のgoogleは時価総額が4000億ドルを超えていたが、従業員数は46000人程度
より少ない人数で、より多くの金を稼げてしまうのであれば、経済格差は自然に生まれてしまう p120
しかし、運のいいほんの一握りの投資家たちにしてみれば、創業からまもないウーバーに投じた2万ドルを4000万ドルに増やすことができただろうが、それ以外の大多数の人々にしてみれば、こういうカジノ式の経済のせいで、もっとずっと困難な状況におちいっている。そして、インターネットに関する物語の登場人物のなかでもっとも重要なのは、トム・パーキンスのいう「上位1%の成功者」ではない。むしろ、ウーバーに投資したこともなければ、ビットコインを持ったことも、エアビーアンドビーを通じて豪邸の空室を貸し出したこともない、残りの99%こそが重要なのだ。 「どうしたら自分が上位1%の成功者になれるかどうか」を画策してばかりの世界は誠実なのだろうか
今の時代、「こうやったらあなたも上位1%の成功者になれますよ」と成功を煽ってばかりで、ノブレス・オブリージュはあるだろうか? シリコンバレーに広がるカルトのようなスローガンが、「失敗への礼賛」
最終的に「自分が1%の成功者になること」を目指した失敗への礼賛ミームは、世界全体の格差を広げている
著者は、インターネットを渦巻くこの現状に対して、「大きな失敗」と批判している
コダックによって栄えていた街と多くの従業員が路頭に迷う
コダックでは、47000人の従業員が解雇
フェイスブックがインスタグラムを10億ドルで買収したとき、インスタグラムのフルタイムの従業員数はたったの13人だった
インスタグラムを利用しているユーザが、ある意味インスタグラムの従業員でもある
インターネット経済では、個人データが広告収入の大きな種となっている
だから、個人データを収集するだけの無料のウェブサービスたちが大きな経済効果を得られている
音楽ビジネスの破壊
p210
問題は、Youtubeと同様に、Spotifyがクリエイターを食い物にして無料もしくは異常に低価格のコンテンツを提供し、消費者を甘やかしていることだ。 アーティストに還元される金額はわずかで、ミュージシャンに支払われるのは、ストリーミング再生一回につき平均して0.6セントである。
p213
数十億ドルにのぼる価値を持つSpotify や、パンドラなどの企業が、独立系ミュージシャンの生計手段を破壊しているのである。
データを勝手にフリーにした海賊版サイトが、広告収入を得るビジネスモデルの隆盛
「制作者」へお金が届きにくいビジネスモデルが主流になってきた
プラットフォーム税の支払い
無料で配布し、広告収入だけに頼ったり
サブスクに登録し、薄い分け前を貰う
終章の解決策では、規制の導入を提案している
p335
その解決策は、法律と規制とを用い、インターネットの長過ぎる思春期を無理やりにでも終わらせることだ。インターネットをもっと公正な、よい場所にするためには規制を設けることがもっとも効果的である。
p340
解決策を政府による規制強化のみに頼っていてはいけない。結局のところ、ノブレス・オブリージュを法制化することはできないのだ。ティム・ウーのような評論家が論じるように、解決策は、産業革命以来もっとも大きな衝撃をもたらした社会経済の破壊について、デジタル界の新興エリートが説明責任を負うことにある。